【腐向け?】あいうえお作文など [小話]

あなたに出会って初めてぼくは
息をすることを憶えたのだった
有無も言わさず悪夢から引き上げられ
えらぶ時間すら与えられずに目を泳がせれば。
俺のところへ落ちて来いと、彼は言うのだ。


空っぽの瞳を海へ投げかけた
きつく握り締めたのは他でもない、心だ。
狂ってしまえばいいと透明な魚が笑う
けれど、けれど、ぼくらはまどう。
声なき声をただ、無闇に口移す


冷めたコーヒーを抱えてひとりすわる
しんしん雪降る冬の日に
すべては静かに埋もれていってしまった
セックスだなんて、大したもんじゃない
そう 埋もれていってしまっただけなのだ


助けて、と言ってはいけない
血が涙の痕を隠そうと必死にその頬を流れ
つたってもつたってもつたっても
手に持った死を愛おしく抱けぬのならば
とうとう、糸は切れてお前の幕が降りる


なにもない なにもない
荷馬車に揺られて ぼくらはゆく
濡れた身体もそのままに
ねぇ、と時には重なりあって
ノイズの中を 溺れゆく




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